『獣にいたる病 黄泉の裔編』
ぴょこん
ん?
すすすーーーっ
んぅ〜ん
「何やっているの?」
すぅーーーっ
とベッドの端から頭を除かせたのは、沼河だった。
「どうしたの?その耳。かわいい飾りね」
そう言って、撫でるとぴくぴくって動く。
えっ
八雲は、一瞬、何が起こったのかわからず硬直してしまう。
「や、八雲さま…」
フリーズ状態の八雲を見て、泣きべそ気味だった沼河はさらにしゅんとなってしまう。
その沼河の耳には、ミッ○ーマウスのようなおっきな耳が、かわいく鎮座していた。
それが、八雲が触れた瞬間、本物のように動いたのだ。
そう、本物…
「って、本物?」
「はい…」
「でも、かわいいわ、まるでミッキーマウスみたいっ」
「でもっ」
「いいじゃない、あなたには似合ってるもの」
「でも、これ治るのでしょうか?」
「う〜ん、大丈夫じゃないかしら」
その根拠はどこから来るのだろう。
沼河は心の中で突っ込みたくなったが。
しかし、それよりもこのままの状態だったらどうしようという不安な気持ちのほうが強くて
冗談抜きで泣きたい気持ちだった。
「いらっしゃい」
そういうと、八雲は優しく手招きする。
沼河は、素直に八雲の傍にいく。
ふわっ
暖かい腕が、沼河を優しく包み込む。
「大丈夫よ」
「はい…」
八雲に抱きしめられると、何故かすごく落ち着く。
彼女の腕の中で、沼河は優しい眠りに落ちそうになった。



その眠りを切り裂くように、因幡の悲鳴が上がる。
「せ、瀬梨さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「にゃっ」
「そっ、そっ、それ、それ、それ…」
「さぁ〜、今朝、目が覚めるとついてた」
「それって、それって」
「うん、猫耳みたいねぇ」
「ねぇ…ってそんな、落ち着いて」
「そのうち治るんじゃない」
「そのうちって」
「まっ、治んなかったら那智がなんとかしてくれるっしょ」
「な、那智様…」
なむなむ
因幡は、結局、ごたごたを最後は背負い込むことになるだろう那智を思い
一応、合掌しておいた。
「むっ」
「どうしましたぁ?瀬梨さまぁ」
「ねずみのにおいっ」
「はっ?」
ねずみの匂いですか。
まぁ、ねずみぐらい家の中にはいるかもしれませんねぇ
と因幡は、軽い気持ちで思っていたが
それより早く、瀬梨は思いっきり駆け出していた。
「待ってくださいよぉ〜」
因幡もあわてて瀬梨の後を追いかける。
瀬梨の動きは、まさに猫の俊敏さで獲物に向かって瀬梨まっしぐら状態であった。
そして…
「にゃあぁぁぁ」
という叫び声をあげながら、ある部屋に飛び込んだ。
「「きゃーーーっ」」
瀬梨が飛び込むと同時に二人の悲鳴があがる。
「どうしたんですかぁ」
遅れて飛び込んだ因幡が見たものは
マウス沼河を押し倒す、猫耳瀬梨の図であった。
「あちゃーーー」
因幡は、頭に手をついてがっくしうな垂れた。
「た、助けてくださいよぉ」
「おいしそう」
瀬梨は、沼河のほっぺをペロっとひとなめする。
「お、お願いですから食べないでください」
「う〜ん、じゃ、舐めるのはいい?」
と言いながら、沼河の答えも聞かず一心不乱に舐めまくっている。
その場にいた因幡も八雲も止める気はないらしい。
黙って成り行きを見つめるのみであった。

しかし、再び因幡の叫びが部屋に響く。
「あぁぁぁぁぁぁぁ」
「何っ」
「因幡、うるさぁ〜い」
彼女の叫びに、襲われていた沼河と一心不乱にいちゃついて(?)いた瀬梨が、声を発した因幡の方を向く。
すると、因幡は大きな口をあけたままある方向を指さしていた。
「「あ」」
因幡の指さす方を見た二人も同時に声をあげる。
そして、三人に注目された本人。
八雲は自分を見てあっけに取られる三人にわけもわからず。
「はい?」
と首をかわいく傾げるのみだった。

そう、八雲の頭には、白に黒ぶちの耳がついていた。
おまけに立派なツノまでついて。


―またまた無理矢理終了―