『獣にいたる病』
「は?」
今、なんとおっしゃいました、和也くん。
「だから、獣耳病や」
「俺をからかってるのか?和也」
「樹生、からかって何がたのしいんや」
と至極あたりまえのように言って捨てる。
しかし、生まれてこの方、俺はそんな病名なんぞ聞いたことがなかった。
常識的にもそんなめちゃくちゃな病名あるあるはずがない。
「わかった。なら、その病名が実在するとしよう」
「おうっ」
「それで、その獣耳病にかかった結果が、このみるの耳の状態というわけか?」
俺は、みるの耳のあたりを指さしながら和也に聞いた。
「そやっ」
和也は、妙にうれしそうに答える。
俺に指指されたみるはというと、見事な『リス』の耳を頭から生やして、まさに小動物というように泣きべそ状態である。
「で?」
「で?」
「解決策は?」
「ないっ」
「なんだとぉ」
俺は、きっぱり言い切る和也の胸元を思いっきり掴む。
「うわっ、たんまたんま」
「黙れ。こんなにみるが困ってるのに、なんとかしろっ」
「いや、大丈夫や」
「大丈夫?」
「そや、大丈夫。自然治癒するんや」
「ほんとに治るのか?」
「ほんま、治る治る。一週間程度でちゃんと治るさかい」
にやり
治ると聞いて思わず手を離した瞬間、和也が意味ありげに笑う。
「樹生も堪能したらええって」
「なっ」
「お前なっ」
「リス耳のみる様ってかわいいやないか」
「か、か、和也っ」
といきり立つ俺を尻目に、和也は急に思い出したようにみる様に話しかける。
「みる様、その耳、治るまでしばらく女の子とは面会謝絶ということで、樹生に身の回りの世話頼んでください」
「えっ、どうして?」
「その耳、空気感染するんですわ」
「「く、空気感染?」」
和也の言葉に、俺とみるは同時に驚きの声をあげる。
「そやっ、ただし女の子限定で空気感染する。だから、樹生は大丈夫や」
「どやっ、うれしいやろ」っていう風なニュアンスの顔をして、俺とみるを見る和也。
とそこへ
「みる様、お加減が悪いとお聞きしましたが」
という声とともに障子が開き…

そして、翌日、楓の耳には立派なトラ耳が生えた。


―無理矢理終わり―