『続・バレンタイン狂奏曲♪』
「りべーんじっ」
瀬梨は、開口一番、そう叫ぶと台所に突進した。
ごぉぉぉぉぉぉぉ
「な、那智さまぁ。なんか、台所から火の手が」
「ほっときましょう」
「でも、危ないですよぉ」
「なら、見に行きますか?」
那智にさらっと言われて、因幡の顔が真っ青になる。
炎渦巻く台所に見に行くなど死にに行くようなものである。
ぶるん、ぶるん、ぶるん
無言で顔を振りまくる。
「大丈夫ですから、そっとしておいてあげましょう」
「は、はい」
何が大丈夫なのかわからないが、ここは納得しておくことにした因幡であった。

一方、台所ではリベンジに萌える…いや燃える瀬梨の姿があった。
去年のバレンタインには、日の宮の守に邪魔をされ
にっくき日の神女に先を越された屈辱のバレンタイン。
「今年こそ、瀬梨がパパにあげるんだもんねっ」
わたしの拳が真っ赤に燃えるっ!!
「うっしっ。つっくろぉー」
バレンタインチョコづくりに恐ろしく燃える瀬梨の姿があった。

数時間後…
「よっしゃあ。でーきたっ」
死屍累々
散らかり放題散らかった戦場、もとい台所で瀬梨の勝利の宣言にも似た叫び声が響きわたった。
はらはらどきどきで見守っていた因幡と沼河も何故かほっと胸をなでおろす。
「ちょっといってくるねぇ〜」
ばたばたとラッピングをするとあわてて瀬梨は飛び出した。
「いってらっしゃーい」
能天気に声をかける因幡
「樹生様が今どこにいるか知っているのだろうか」
「ぇ」
冷静な突っ込みをぼそっと呟く沼河に、因幡は瀬梨様を追いかけようとも思ったが
さわらぬ神に祟りなし…
(瀬梨様がんばって…)
と心の中で声をかけるに止めた。

「パパはどこかなぁ〜」
なんとなく、立ち寄った公園で樹生を探す。
パパがどこにいるかなんてことは、まったくわからないけど
なんとなく、ここらへんにパパがいるような気がした。
それに、なんとなくパパの匂いもする気がする。
「パパがここらへんにいることは間違いないんだけどなぁ」
瀬梨は、野生の本能の赴くままに樹生を探しまわる。
その時…
(パパ?)
樹生によく似た後ろ姿を見かけた。
「パパだ。うん、パパに間違いないっ」
思わず握りこぶしをつくり、樹生によく似た男を追いかける。
と、そこに長い髪をした女性が横切った。
(えっ)
どっかで見たことのある後ろ姿
というか、にっくきライバルっ
(みぃーーーっ、今年こそは負けないんだからっ)
瀬梨は、勢いよく突進をかける。
しかし、樹生によく似た男と、これまたよく見知った八雲がべたべたしながら公園のベンチに座る。
「う、うそ…」
呆然自失の瀬梨をよそに、八雲はこれみがよしに樹生によりそう。
そして…
「はい、あなた」
とチョコを差し出す。
それを照れながら受け取る樹生の姿
「……」
それを見ていた瀬梨は、敗北感に支配それる。
「う、うそだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
叫びながら走り去る瀬梨。

くすっ
そんな瀬梨を横目で見ながら、八雲はささやかな勝利に酔いしれる。
そして、八雲は『式神の樹生』にもたれかかる。
「わたしだって、出来るなら本物のあの方にわたしたいわよっ」
そう愚痴ると、ほうっとため息をついた。


― fin ―