【Sin世紀救世主伝説 日高の拳】
Mr.Volts

 200X年、世界は黄泉の炎に包まれた!

捨井戸スティード「イヤッホー! 邪魔だ、道を開けろ〜!」

一般人「ひぃぃ! あ、赤信号なのに・・・」

土方衣ドカティ「バーカ、信号なんて守って何になるってんだ!? そんなもの、ガソリンの足しにもなりゃしねぇってのにヨォ!」

 日本の道路は、暴力が支配する時代になっていた。

捨井戸スティード「へっへっへ。俺達は無敵だな。もう警察も何もかも怖くネェ」

土方衣ドカティ「うちがここまで勢力を広げられたのも、ジードさんが入ってきてくれたお陰だな」

 そう言って二人は、後部座席を独占している大柄の男に羨望の眼差しを向ける。

 ジードと呼ばれた男は赤い目を光らせながら、コップに入っているガソリンを一気に飲み干した。

爺怒ジード「うわっはっは。何たってオレは黄泉の裔。スティードやドカティのような、ただの人間とは格の違う存在だからなぁ」

捨井戸スティード「全くだ。これからも頼りにしてますぜ、ジードさん!」

 車内が爆笑に包まれる。だがそこに、見回りに行っていた男が血相を変えて飛び込んで来た。

暴走族「ジ、ジードさん!」

土方衣ドカティ「どうした、何があった!?」

暴走族「て、偵察隊の車が・・・何者かに!!」

爺怒ジード「何だとォ!?」

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 車を置いてある空き地に向かうと、そこにあった全ての車から火が上がっていた。
付近一帯には、ガソリンの燃える臭いが充満している。

暴走族A「こ、こりゃヒデェ。ここらの車、バイク全部がイカれちまってる・・・」

 呆気に取られる部下を横目に、爺怒ジードの巨躯が怒りで震える。

爺怒ジード「だ、誰だ? 誰がこんな事を・・・俺達の車と知っての仕業かぁ!?」

 その時、消火活動に回っていた土方衣ドカティ爺怒ジード達の側に戻ってきた。

土方衣ドカティ「ジードさん、それにしても変です」

爺怒ジード「何がだよ、ドカティ」

土方衣ドカティ「これはどう見ても外部から破壊されたものではありません。車の内部からやられたような感じなんです・・・」

爺怒ジード「そんな事、一体どうやって・・・?」

捨井戸スティード爺怒ジードさん! こいつは車も無事だし、乗ってる奴もまだ意識があります!」

 怪我人の救助をしていた捨井戸スティードの声に、一同が集まる。

爺怒ジード「オイ、しっかりしろ。何があったんだ!!」

暴走族乙「ほ・・・ほくと」

爺怒ジード「ほくと?」

土方衣ドカティ「危ない、爺怒さん!! 車が爆発する!!!」

爺怒ジード「うぉっ!?」

 ドッガァァァァン!!!

突然、車のボンネットが飴細工のように歪み、他の車と同様に弾けて炎上した。

捨井戸スティード「な、何だ! 今の爆発は!?」

土方衣ドカティ「まさか・・・小型の時限爆弾のようなものを・・・」

爺怒ジード「いや、今のは・・・そんなモンじゃなかった」

爺怒ジード「ひょっとするとこれは・・・そして『ほくと』とは・・・」

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キキィーッ!!!

爺怒ジード「危ネーだろ、このクソガキィ! このジード様の走る前をふらふら渡ってきやがるとは、いい度胸だ!!

リン「・・・」

 自分の走行を邪魔された爺怒ジードは凄んでみせたが、目の前の娘は怯えた表情をするだけで一言も言葉を発しない。

捨井戸スティード「だんまりかよ・・・上等だぜ。こいつには一度、俺達が社会のルールってモンを教育してやらないとなぁ」

 隣を走っていた捨井戸スティードが下卑た笑いを発しながら、乱暴にリンの細い片腕を掴む。
そこへ一人の老婆が駆け寄ってきて、爺怒ジードの腰にすがりついた。

老婆「お・・・お待ち下さい!!」

土方衣ドカティ「何だよテメェ?」

老婆「このリンは、幼い頃に両親が交通事故で死ぬところを目の前で見て以来、ショックで言葉が喋れなくなってしまった不憫な娘なのです! どうか、どうかお許しください・・・!」

 老婆のまくしたてるような説明を聞いた爺怒ジード達は、さも可笑しそうに大声をあげて笑う。
すると爺怒ジードは、妙案を閃いたとばかりに赤い目を濁らせながら老婆に話し掛ける。

爺怒ジード「ヘェ、それはイイ事を聞いた。よし、コイツが俺に向かって『ジードさんゴメンなさい』と声に出してワビを入れたら許してやるよ」

捨井戸スティード「ハハハ。そりゃ寛大な処置ですネェ。 普通なら俺達に逆らった奴はボコボコにした挙句、国道引き回しの刑にされるのになぁ」

老婆「で、ですから先ほど申し上げた通り、この娘は喋れないのです! お詫びならこの私が何でも致しますから、何とぞご勘弁を・・・」

土方衣ドカティ「死にかけのババアを嬲っても、面白くもなんともねえよ」

捨井戸スティード「おいガキ、何とか言ってみろよ。ああ!?」

リン「・・・」

爺怒ジード「ハッハッハ!」



『・・・許せん!』

 その時、黒塗りのクラウンがスーッと止まり、車から眼鏡をかけ、スーツを見に纏った男が降りてきた。

捨井戸スティード「何だぁ、てめぇは!? コラーッ!!」

 突然の闖入者に、捨井戸スティードが声を荒げて威嚇する。

バキ・・・ボキ・・・

日高「どけ!」

土方衣ドカティ「いい度胸してるじゃねぇか!! ブチ殺してやる!!」

 スッ・・・ドドド!!

 日高は流れるような動きで攻撃をかわすと、捨井戸スティード達のバイクに鋭い蹴りを叩き込んだ。

捨井戸スティード「ヘッ。コイツ、やる気あんのか!? 俺達の方じゃなく、バイクに攻撃なんかしやがって」

メコッ・・・

土方衣ドカティ「こ、これは・・・ヤバイ! 逃げろ捨井戸スティード!!」

捨井戸スティード「な・・・何ィ!?」

ドバゴォーン!!!

捨井戸スティード達がかろうじてバイクから飛び降りた直後、バイクが異常な形に変形して爆発した。

捨井戸スティード「お、俺達の・・・」

土方衣「・・・魂が」

日高「これからは道交法を遵守し、真っ当に走るんだな」

 崩れ落ちる暴走族に諭すように語りかけた日高を観察するように見ていた爺怒は、納得したように口端を歪める。

爺怒ジード「フフフ、やはり神力か。ということは、貴様は日ノ宮の守だな? なるほど、守ならば、あの惨状にも納得がいく」

日高「その娘を離せ」

爺怒ジード「貴様も守の端くれなら、力ずくで奪ってみたらどうだ?」

リン「・・・!」

日高「お前は黄泉の裔か。では遠慮なくそうさせてもらおう」

爺怒ジード「馬鹿め、俺の車は普通のそれとは違うぜ! 四拾四口径マグナム弾すら受け止めるこの頑強なフレームを誇る米国車に、貴様の拳は通じない!」

 そう吐き捨てた爺怒ジードはジープのアクセルを踏み込み、日高を轢くべく猛然と突っ込んできた。

日高「ほぉ〜。あーたたたたたたたたたたたたた!」

 交錯の瞬間、日高の百烈拳が車のボディに命中し、追突の直前でジャンプする。
身を翻して着地した日高の両手には、リンが抱きかかえられていた。

爺怒ジード「ふふふ、小娘を救い出す事を優先したようだが、そんな奴はもうどうでもいい」

爺怒ジード「貴様の拳など、この鍛え上げられたボディと俺の力の前には蚊ほども効かんわ!!」

捨井戸スティード「おお、さすが爺怒さん!」

爺怒ジード「ぐふふ、ぶっ殺してやる・・・!」

 自信満々に意気込む爺怒ジードを前に、日高はくるりと背中を向ける。

日高「お前はもう、Sinでいる」

爺怒ジード「何ィ〜!?」

爺怒ジード「い!?」

ボゴォッ!!!

捨井戸スティード「ひ、ヒィィ!! 爺怒ジードさんが殺られた!?」

土方衣ドカティ「コイツは化け物だ! 逃げるぞ!!」

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老婆「あ、ありがとうございました! お陰でリンは助かりました」

リン「・・・」

日高「それは良かった。では、私はこれで」

老婆「あの! せめてお名前を!」

日高「すまないが、訳あって名乗るわけにはいかないのだ。それでは、元気で・・・」

リン「・・・」





〜後書き〜
ハイ、何かどんどん本筋と違った方向へ行ってしまっている運転手の話です。とうとうコッチの世界に来てしまいました(汗)
前回網罵の話を書いている時既にこの構想はあったのですが、実際に書いていいものかどうか迷いまして・・・結局書いてしまった訳ですが^^;
一応、この後の話(南斗との対決やジャギ、トキ、ラオウ三兄弟との下り)もいくつかアイデアだけはあるんですが、これを書くかどうかは現在のところ不明です。

それでは、こんなおバカSSにお付き合い頂きまして有難う御座いました。

Mr.Volts