『運転手(プロ)の独り言』
A/Z




 ○月×日 今日は送迎車兼我が愛車に最新のカーナビゲーションシステムを搭載しようと、カーギアショップに行ってみた。
この分野は常に最先端の技術が導入されており、日々驚くべき早さで成長を遂げているために見ていてなかなか興味深い。
夢中になって眺めているうちに、いつの間にかみる様の下校時刻ギリギリになってしまっていた。

しかし、私は運転手(プロ)

私のGPSよりも優秀な頭脳が学校までの最短距離を瞬時に割り出し、その道筋に沿って疾風の如く愛車を飛ばす。
だが、その途中で自転車に乗った買い物帰りのご老人を轢きそうになった。

・・・危うく職を失うところだった。


 ○月△日 今日は我が愛車に洗車とワックス掛けを施した。
まるで生まれ変わったかのように美しく輝く漆黒のボディをいつまでも眺めていたい気分だったが、
突然空模様が怪しくなってきたので早々に切り上げて車庫入れを済ませた。

案の定、午後からは土砂降りの天気になった。
しかしそんなときに限って、和也様から迎えに来て欲しいとの連絡が入る。

指定された場所はここからそんなに離れた距離ではない。
思わず「本日その方向は私にとって凶事ですので・・・」と、陰陽師っぽい方便を駆使して断ろうかとさえ思った。

しかし、私は運転手(プロ)

喉下まで出かかった台詞の飲み込んで電話を切ると、大雨が降る中、愛車を走らせるのだった。


 ○月☆日 今日は日の宮にとってかなり重要な公用があったので、いつもの愛車ではなくリムジンを借りてみる様達を送迎した。無事に大役を終え、仕事が一段落ついたところで小腹が空いてきた。ゆっくりと腰を落ち着けてオープンカフェで優雅にランチでも取りたい気分だが、私ほどの運転手(プロ)ともなると、いつ何時、誰の呼び出しでも受けられるようにしておかねばならない。

ここはドライブスルーが最良の選択であろう。

注文を済ませ品を受け取ったところまでは良かったのだが、少々困ったことになった。出口が狭すぎてリムジンでは出られそうにないのだ。

しかし、私は運転手(プロ)

後続の車の人達に平謝りをしてバックで出てもらい、私の華麗な運転技術を駆使してバックで入り口から道路に出ることに成功した。

怒号にも似たクラクションの嵐の中を、私は何事も無かったかのように走り出す。


 △月○日 今日は楓様をお迎えに上がった。
楓様は口数の少ない方なので、車内が気まずい沈黙に包まれる。その雰囲気を少しでも払拭する為に私は楓様に新型フラグシップタイヤの
素晴らしさを説いてみたが、全て黙殺されてしまった。

しかし、私は(運転手)プロ

車内に色濃く漂い始めたプレッシャーにも動じることなく、無事に楓様を日の宮まで送り届けた。
並の運転手には出来ない芸当であろう。


 △月☆日 今日は天気が良かったので、路地に車を止めて公園を散策して来たところ、あろうことか私の愛車がレッカー移動されてしまっていた。そろそろみる様をお迎えに上がる時間が来てしまう。

しかし、私は運転手(プロ)

近くにあったレンタカーに駆け込むと、全く同じブラックカラーの車種を貸して欲しいと頼む。しかしそれらは現在全て出払っていて、黒色の車はリムジンしか残っていないとの事。私は仕方なくそれを借りて学校に乗り付けるべく車を全力で走らせた。

お迎えの時間にはちゃんと間に合った。みる様は全く普段通りの様子だったが、楓様は終始訝しげな顔で車内を見回し、私の後頭部に疑惑の視線を投げかけていた。

気付かれたか・・・?


 ☆月○日 最近、自動車による事故が増えているようだ。
私の経験上、疲れた身体で運転をするのが最も危険だ。

今月から来月にかけては日の宮での公用が多いために私は休みが殆ど無く、
恐ろしい程のハードスケジュールに追われて睡眠も満足に取れない。

しかし、私は運転手(プロ)

私にとって運転など呼吸をする事と同じである。故に眠りながらでも問題なく
運転が可能なので、疲れることはない。

今日は和也様が降り際に「日高さん、今日はいつにも増して静かやったなぁ」
とおっしゃっていた。

・・・完璧だ。


 ☆月△日 今日の仕事は甲斐樹生という青年を日の宮まで送ることらしい。

普段みる様の通われている学校の校門に車を止めると、その青年は何と
全身血だらけ、着ている服もボロボロという風体で車内に乗り込んで来た。
昨日、シートカバーを取り替えたばかりだというのに・・・。

その上、彼の靴は泥まみれである。絨毯も汚れてしまったではないか。

しかし、私は運転手(プロ)

複雑な感情をしまい込み、笑顔でギアをローに入れる。
どうやら、明日の休暇は車内の清掃で終わることになりそうだ・・・。



あとがき

私は因幡が大好きなのですが、とうとう人気投票で日高さんに追い抜かれてしまいましたw
その記念(?)で、日高さんのお話を考えてみました。完全にフィクションでございます。

本当の日高さんは内心こんなことを考えている訳はない・・・筈ですw
でも、お給料は結構貰っているんじゃないでしょうかねw

それでは失礼します♪